桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)とは?その効能と副作用について
桂枝加朮附湯は、冷えを感じやすい人の関節痛や神経痛などの症状を和らげるために用いられる漢方です。また、水分の代謝を調節し、痛みを鎮めてくれる役割もあります。
今回は桂枝加朮附湯の効能・効果や副作用について、詳しく見ていきます。
桂枝加朮附湯の効能・効果について
桂枝加朮附湯の効能・効果について確認しましょう。
この漢方は主に冷えで関節や神経が痛む場合に用いられます。
手足がしびれて冷たくなる、あるいはこわばる。時には関節に水が溜まったり、腫れて痛みがあるような場合にも使われます。
西洋医学では、起こっている痛みに対してその痛みや炎症を取り除くために鎮痛剤やパップ剤などが用いられます。
一方、漢方では痛みの原因となっている冷えなどに対して体の中から温め気や血のめぐりを良くすることで関節痛や神経痛を改善していきます。
桂枝加朮附湯に含まれている生薬について
「漢方」と「生薬」について、この2つの違いを皆さんご存知でしょうか。
生薬とは、薬草の根、葉っぱ、果実、花などを加工したものを指します。漢方とは、このような生薬で構成された薬のことを指します。
一つの漢方薬には、一般的に複数の生薬が含まれています。
それでは、桂枝加朮附湯にはどのような生薬が含まれているのでしょうか。順番に確認していきましょう。
桂皮(ケイヒ)
桂皮は、クスノキ科ケイまたは同属植物の幹または枝の皮を乾燥させたものです。
発汗、発散を促し、身体を温めながら解表する作用があります。
別名は桂枝、ニッキ、シナモンとも言われており、私たちになじみのある食べ物です。
芍薬(シャクヤク)
キンポウゲ科、ボタン科シャクヤクまたは近縁種の根っこです。
鎮痛作用、鎮痙作用、冷え性改善作用があります。また、筋肉のこわばりの緩和や心身手足の疼痛緩和、下痢の改善などにも用いられます。
蒼朮(ソウジュツ)
キク科ホソバオケラまたはその変種の根茎です。
発散作用、健胃作用、利尿作用があります。
大棗(タイソウ)
大棗は大きなナツメという意味で、クロウメモドキ科ナツメの果実を乾燥させたものです。
胃腸機能の調節作用、鎮痙作用、また緩和薬性作用があります。
甘草(カンゾウ)
マメ科ウラルカンゾウまたはネンキンカンゾウまたは近縁植物の根です。
緩和作用、止痛作用、鎮痛作用などがあります。
また、甘草は大棗同様、他の生薬の薬理作用をうまく調和させる働きもあります。
生姜(ショウキョウ)
その名の通り、ショウガです。
発散作用、健胃作用、鎮吐・鎮嘔作用などがあり、胸がつかえたりげっぷが出たりするのを治す作用もあります。また、皆様もよくご存じの通り、身体を温めながら解表し、発汗・発散を促す生薬でもあります。
附子末(ブシマツ)
附子はキンポウゲ科カラトリカブトまたは近縁植物の塊根です。
鎮痛作用、強心作用、利尿作用などがあるとされています。
神経痛・リューマチにも良い言われており、新陳代謝機能失調の回復を促す作用があります。
漢方医学では、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」が体内で順調にめぐることによって、健康状態を維持することができると考えられています。
「気」は目には見えないけれど人の体を支えるすべての原動力のようなもの、「血」は全身の組織・器官に栄養を与えるもの、そして「水」は飲食物の中の水分を消化吸収によって人の身体に必要な形に変え身体をうるおすものです。
この3つはお互いに影響しあっており、大切なのはバランスよく巡っていることです。
上記のような様々な種類の生薬が絶妙なバランスで効果を発揮するように、漢方薬はつくられているのです。
桂枝加朮附湯の副作用について
桂枝加朮附湯の使用上の注意と副作用について確認しましょう。
基本的注意について
次の7つに該当する方は、当薬剤を服用する前に医師・薬剤師・登録販売員に相談してください。
- (1)医師の治療を受けている人。
- (2)妊婦または妊娠している可能性のある人。
- (3)のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人。
- (4)高齢の方。
- (5)今までに、薬などにより発疹・発赤・かゆみなどを起こしたことがある人。
- (6)むくみがある人。
- (7)高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人。
副作用について
皮膚症状として発疹・発赤、かゆみ、その他の症状として動悸、のぼせ、ほてり、口唇・舌のしびれがあらわれることがあります。
また、重大な副作用としては、偽アルドステロン症、ミオパチーが報告されています。
(偽アルドステロン症:血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず、高血圧・むくみ・カリウム喪失などの症状があらわれる。
ミオパチー:筋力低下、易疲労性や筋痛。
どちらも手足のだるさ、しびれ、ツッパリ感、こわばり、脱力感、筋肉痛などが症状としてあらわれます。)
上記のような症状が出た場合には、直ちに服用を中止して、医師・薬剤師に相談するようにしてください。
桂枝加朮附湯を服用する際の注意点
桂枝加朮附湯だけではなく、漢方薬を服用するにあたっての注意点も一緒に確認しましょう。
漫然と長期服用はしないこと
漢方薬は作用がおだやかで、長期間飲まないと効果が実感できないと思っていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、漢方薬の中には、風邪症状にもち言われる葛根湯のように速やかに効果が確認できるものもあります。
桂枝加朮附湯は、即効性のあるものではありませんが、1か月ほど服用しても症状が良くならない場合は、身体や症状に漢方薬が合っていない可能性があります。
漫然と飲み続けるのではなく、その場合は医師、薬剤師、販売登録員に相談することをおすすめします。
併用に注意すること
同じ生薬が重なると作用が強く出てしまったり、逆に期待した効果が弱まってしまうという可能性もあります。
併用する薬剤がある時は、念のため処方医・薬剤師に相談していただくのが良いでしょう。
副作用が出る可能性があることを知っておくこと
一般的に西洋薬に比べて、漢方薬は確かに副作用は少ないです。しかし、上記で確認したように、漢方薬でもアレルギーや副作用がでる可能性があります。
自分が飲んでいる漢方薬の副作用を知っておくことで、もしも症状があらわれた時に服用を中止できたり、重大な副作用が起こる可能性を回避できるかもしれません。
毎日口にするものです、自己管理も大切ですね。
漢方薬の飲み方について
漢方薬は基本的に食前または食間の服用です。水かぬるま湯で飲んでください。
食間とは食事の際中ではなく、食後2時間後の服用が一般的です。
まとめ
今回は冷えや神経痛、関節痛におすすめされる漢方薬、桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)について紹介しました。
この桂枝加朮附湯は、ツムラやクラシエなど数社の会社から発売されています。医療用の医薬品としても取り扱いもあるほか、一般用医薬品の第2類医薬品としてドラッグストア等でも購入することができます。